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粒度分布のD50・D90・D97の違いと使い分け

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粒度分布の測定結果にあるD50、D90、D97は、いずれも粒子の大きさを表す指標ですが、示している位置が異なります。数値の「50」「90」「97」は、粒子径そのものではなく、累積分布の割合を示します。たとえばD90は、累積分布で90%に達したときの粒径です。

簡単にいえば、D50は分布の中心、D90は粗粒側、D97はさらに粗粒側の状態を把握するために使われます。ただし、どの値を品質規格に使うべきかは、材料や製品の用途、管理したい特性によって変わります。この記事では、各指標の意味と違い、数値の読み方、測定結果を比べるときの注意点を解説します。

D50・D90・D97は累積粒度分布のどの位置を示す?

D値は、粒径の小さい側から粒子量を積み上げた累積分布において、所定の割合に達する粒径を表す値です。D50・D90・D97を正しく読むには、まず「何を100%として積算した値か」を確認する必要があります。

D値は「粒径」ではなく、累積割合に対応する粒径

一般的なふるい下累積分布では、ある粒径以下の粒子量を小さい粒径側から積み上げます。その累積割合が50%に達する粒径がD50、90%に達する粒径がD90、97%に達する粒径がD97です。たとえば「D90=20 µm」は、測定で用いた基準において、粒子量の累積が90%となる粒径が20 µmという意味です。粒径だけを示す値と異なり、D値は粒子群の分布のどこを見ているかを伝えます。

「90%の粒子が20 µm以下」と説明されることもありますが、ここでいう割合は必ずしも粒子の個数とは限りません。体積基準の分布なら体積の割合、個数基準なら粒子数の割合です。報告書や装置の設定に「体積基準」「個数基準」などの記載がある場合は、値と合わせて確認しましょう。割合の基準が違うと、同じ試料でもD値が異なることがあります。

測定値を読む前に「何%基準か」を確認する

D50、D90、D97は、通常は同じ測定結果の累積分布から読み取ります。このとき、粒径の小さい側から積算するふるい下分布なのか、大きい側から見るふるい上分布なのかを確認してください。ふるい下分布を使う場合、割合が大きくなるほど、対応する粒径も大きくなります。したがって、同じ分布から求めた値なら、一般にD50よりD90、D90よりD97のほうが大きくなります。

値の単位にも注意が必要です。µmとnmでは数値の桁が異なるため、複数の報告書を比べるときは単位をそろえます。また、累積分布の向きや割合の基準が明記されていない場合は、測定機器の設定や報告書の注記を確認しましょう。数値だけを抜き出して比較するのではなく、割合の基準・単位・分布の向きをセットで読むことが基本です。

D50・D90・D97の違いと使い分け

3つの値の主な違いは、累積分布のどの位置を代表しているかです。D50は分布の中央、D90とD97はそれより粗粒側を示します。数値が大きい指標ほど、累積分布の中で粒径の大きい部分まで反映した値になります。

D50は分布の中心を把握する中央値

D50は、累積分布が50%となる粒径で、メディアン径(中央値)とも呼ばれます。測定基準が体積なら、試料の体積の半分がD50以下の粒径側にあり、もう半分がD50より大きい側にあることを示します。粒子群の中心的な大きさをひとつの値で把握しやすいため、粉体の代表径や製品ロット間の比較に使われます。

ただし、D50は算術平均などの「平均径」と同じではありません。粒度分布が左右対称でない場合、平均径・中央値・最頻値は異なることがあります。また、D50だけでは粗粒側や微粒側にどれほど広がりがあるかは分かりません。D50が同じ試料でも、分布の幅や裾の形状が異なる可能性があります。中心粒径の把握には便利ですが、品質評価では必要に応じて他のD値や分布曲線も確認しましょう。

D90は粗粒側の分布を確認する指標

D90は、累積分布が90%に達する粒径です。体積基準のふるい下累積分布なら、測定対象の体積の90%がその粒径以下にあり、残る10%はそれより大きい粒径側にあると読み取れます。D50と比べて粗粒側の情報を含むため、代表径だけでは見えない大きめの粒子の影響を確認したいときに役立ちます。

たとえば、ロット間でD50はほぼ同じなのにD90が大きくなっている場合、中心的な粒径は変わらなくても、粗粒側の分布が広がった可能性があります。ただし、D90単独で粗大粒子の量や原因を特定できるわけではありません。凝集、分級状態、試料調製など、測定に影響する条件も確認します。D50とD90を組み合わせれば、中心粒径と粗粒側の変化を分けて見る手掛かりになります。

D97はさらに粗粒側まで確認したいときに使う

D97は、累積分布が97%に達する粒径です。ふるい下累積分布であれば、測定基準で扱う粒子量の97%がその粒径以下にあり、残る3%はそれより大きい側に位置するという意味です。D90より高い累積割合に対応するため、分布のより粗い側まで反映します。材料や業界によっては、粗粒側の粒径を管理する指標として採用されています。

D97を使うかどうかは、粗粒側のどの範囲を管理したいかで判断します。D90では把握しにくい粒径側を確認したい場合に候補になりますが、D97が常にD90より優れた指標というわけではありません。どの累積割合を規格にするかは、製品性能や工程上の問題と結びつけて決める必要があります。D97は「粗粒側をさらに見るための値」であり、単に数値が高いほど品質が良い、または悪いと判断するものではありません。

数値例で見るD50・D90・D97の読み方

各値を別々に暗記するより、同じ試料の値を並べて読むと関係が分かりやすくなります。次の数値は説明用の仮例です。実際の品質基準や、特定の材料に対する良否を示すものではありません。

同じ試料の3つの値を並べて比較する

ある試料の測定結果が、体積基準のふるい下累積分布で「D50=10 µm、D90=25 µm、D97=35 µm」だったとします。この場合、体積の累積が50%になる粒径は10 µm、90%になる粒径は25 µm、97%になる粒径は35 µmです。値が進むにつれて粒径が大きくなるため、D50よりD90、D90よりD97のほうが粗粒側の様子を反映していると読めます。

この3点から、中心粒径と粗粒側の累積位置をおおまかに把握できますが、粒度分布の全体像までは分かりません。たとえば、D50とD90の間に粒子がどのように分布しているか、複数のピークがあるか、D97より大きい側にどのような粒子があるかは、分布曲線や追加の指標も見て確認します。D値は分布を要約した代表点であり、粒度分布曲線そのものの代わりにはなりません。

粒度分布のD値を比較するときの注意点

D50・D90・D97は便利な指標ですが、値が似ているからといって、試料の粒度分布が同じとは限りません。また、測定条件が異なれば、測定対象が同じでも結果に差が出る場合があります。数値を比較するときは、分布基準と測定条件をそろえているかを確認してください。

体積基準・個数基準などの分布基準をそろえる

粒度分布は、何を基準に割合を計算するかによって見え方が変わります。個数基準では小さな粒子も一つひとつ同じ重みで数えますが、体積基準では粒子の体積が割合に反映されます。そのため、同じ試料を測っていても、個数基準と体積基準ではD50やD90などの値が異なることがあります。報告書では「体積基準」「個数基準」などの表記、または装置ソフトウェアの設定を確認しましょう。

たとえば、粒子の数では微粒子が多くても、体積では少数の大きな粒子の占める割合が大きくなる可能性があります。どちらが適切かは、知りたい現象や管理目的によります。測定機関や装置を変更した前後のデータを比べる場合は、分布基準が一致しているかを確認し、異なる場合はその差を踏まえて評価することが大切です。D値を比較する前に、粒径の単位だけでなく割合の基準もそろえます。

測定方法・試料調製・分散条件を確認する

粒子径は、測定装置が採用する原理に基づいて求められます。粒子の形が不規則な場合、装置や測定原理によって異なる「相当径」として評価されることがあります。そのため、測定法が違う結果を、同じ尺度の値としてそのまま比較できるとは限りません。装置の変更や測定機関の変更がある場合は、測定原理や解析条件を確認してください。

試料の取り扱いも結果に影響します。分散媒、前処理、撹拌や超音波の条件、試料濃度などが異なると、粒子の分散状態が変わり、測定値にも差が生じる場合があります。品質管理でロットを比較するなら、採取方法や試料調製、測定条件をできるだけ統一し、必要に応じて測定の再現性も確認します。値の変化が材料そのものの変化か、測定条件の違いかを切り分けてから判断しましょう。

粒度分布のD50・D90・D97に関するよくある質問

どのD値を使うかは、材料の種類だけで一律に決まるものではありません。管理したい品質特性と実際の性能との関係を確認し、規格や測定方法に落とし込むことが重要です。

品質規格にはD50・D90・D97のどれを設定する?

品質規格に設定する指標は、製品に求める性能や工程で問題になる粒径を踏まえて選びます。中心的な粒径の変化を見たい場合はD50、粗粒側の分布を管理したい場合はD90やD97が候補になります。製品によっては、複数の値を組み合わせたり、粒度分布曲線や別の測定項目を併用したりする方が、求める品質を把握しやすいこともあります。

まず、粒径の変化がどの製品特性や工程上の課題に関わるのかを整理し、過去データや評価試験を通じて指標と性能の関係を確認します。そのうえで、測定基準・単位・測定条件を明記して規格化します。慣例だけでD値を決めず、管理対象と測定値の関係を確かめてから選ぶことが、運用しやすい品質規格につながります。

D97が小さいほど、必ず良い粉体?

D97が小さくなると、同じ測定基準・条件で比べた場合、累積分布の97%点に対応する粒径が小さくなったことを示します。ただし、その変化が製品にとって望ましいかは用途次第です。粗粒側を抑えたい製品では有用な変化かもしれませんが、求める性能や加工性によっては、別の粒度バランスが必要な場合もあります。

さらに、D97だけでは分布の中心や微粒側の状態は分かりません。D50が変化しているのか、D90との差がどうなっているのか、分布曲線に特徴があるのかも合わせて確認してください。測定基準や試料調製が異なる値を比較すると、D97の差が材料の変化を示しているとは限りません。D97の大小だけで粉体の品質を決めず、製品規格と測定条件に照らして評価しましょう。

まとめ

D50・D90・D97は、粒度分布の累積割合がそれぞれ50%・90%・97%となる粒径です。D50は分布の中心を把握する中央値、D90は粗粒側、D97はさらに粗粒側の状態を確認する際に使われます。目的に応じて指標を使い分ければ、代表径だけでは捉えにくい分布の変化を把握しやすくなります。

一方で、D値だけでは分布全体を説明できず、個数・体積などの割合の基準や、測定原理・試料調製によって結果が変わることがあります。測定結果を比較するときは条件を確認し、品質規格を定めるときは製品の用途や管理したい特性との関係を確かめてください。

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